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サイバー攻撃の被害後にかかる費用とは?中小企業が知っておきたい5つの支出

サイバー攻撃の被害後にかかる費用とは?中小企業が知っておきたい5つの支出

サイバー攻撃によって会社のシステムが使えなくなったとき、経営者が考えなければならないのは、情報漏えいや賠償金だけではありません。

原因を調べる費用、システムやデータを復旧する費用、取引先や顧客への対応、そして業務が止まることによる影響など、複数の支出や損失が発生する可能性があります。

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が2026年3月に公表した中小企業向けの事例集でも、ランサムウェアによる被害などについて、初期対応、復旧、報告・公表、弁護士・訴訟、再発防止といった費用が整理されています。

この記事では、サイバー攻撃の被害後に考えられる5つの費用・損失を整理し、中小企業が平時から確認しておきたいポイントを解説します。

1. サイバー攻撃の被害後には何にお金がかかるのか

サイバー攻撃による被害は、原因や被害範囲によって異なります。例えば、業務用サーバーのデータが暗号化された場合と、顧客情報が外部に漏えいした場合では、必要となる対応が異なります。

被害後に発生し得る費用は、主に次の5つに分けて考えられます。

  • 原因調査・初動対応にかかる費用
  • システムやデータの復旧にかかる費用
  • 顧客・取引先への対応にかかる費用
  • 弁護士への相談や賠償などに関する費用
  • 業務停止による損失と再発防止のための支出

すべての事故でこれらの費用が発生するわけではありません。ただし、被害の内容によっては、複数の費用が同時に発生することがあります。

2. 原因調査・初動対応にかかる費用

不正アクセスやランサムウェア感染が疑われた場合、まず確認したいのは、何が起きたのか、どこまで影響が広がっているのかという点です。

状況によっては、外部の専門会社などに依頼し、次のような調査を行う必要があります。

  • 不正アクセスの経路や原因の調査
  • 感染したパソコンやサーバーの特定
  • 情報が外部に持ち出された可能性の確認
  • 調査に必要なログやデータの保全・解析
  • 被害範囲を整理した報告書の作成

社内の担当者だけで原因や影響範囲を特定できるとは限りません。外部の専門家に調査を依頼する場合、その費用も考慮する必要があります。

また、初動対応では、感染が疑われる機器の隔離やアカウントの停止などを検討することがあります。対応を誤ると被害状況の把握や復旧に影響する可能性もあるため、事前に連絡先や対応手順を整理しておくことが重要です。

3. システムやデータの復旧にかかる費用

原因を調査した後は、業務を再開するための復旧作業が必要になる場合があります。

例えば、次のような費用です。

  • パソコンやサーバーの初期化・再設定
  • バックアップからのデータ復元
  • システムや業務ソフトの再構築
  • 機器の交換や代替機の手配
  • 復旧作業を外部業者へ依頼する費用

バックアップがあれば必ず短期間で復旧できる、というわけではありません。バックアップ自体が被害を受けていたり、復元に必要な環境が整っていなかったりする場合もあります。

日頃からバックアップを取得するだけでなく、実際に復元できるかを確認し、業務再開までの手順を決めておくことが大切です。

4. 顧客・取引先への対応にかかる費用

顧客情報や取引先の情報が漏えいした可能性がある場合、技術的な復旧だけでは対応が終わらないことがあります。

事故の内容や法令上の要件などに応じて、次のような対応が必要になる場合があります。

  • 影響を受ける顧客や取引先の確認
  • 関係者への連絡や説明
  • 問い合わせ窓口の設置・運営
  • 通知文書や公表資料の作成
  • 必要に応じた専門家への相談

対応に社内の人員を割けば、その間、本来の業務に使える時間が減ることも考えられます。外部業者に窓口対応などを委託する場合には、別途費用が発生する可能性があります。

情報漏えいが疑われる段階で、何をどこまで公表するかを独断で決めるのではなく、事実関係を確認し、必要に応じて専門家や関係機関に相談しながら進めることが重要です。

5. 弁護士への相談や賠償などに関する費用

情報漏えいやシステム障害によって顧客や取引先に損害が生じた場合、状況によっては、損害賠償請求や法的な対応に発展する可能性があります。

その場合に考えられるのが、次のような費用です。

  • 弁護士への相談費用
  • 請求や紛争への対応費用
  • 訴訟・調停などに関する費用
  • 法的責任が認められた場合の損害賠償金

ただし、サイバー事故が起きたからといって、必ず賠償責任が発生するわけではありません。責任の有無や範囲は、事故の内容、契約関係、適用される法令などによって異なります。

事故対応に必要な費用と、第三者に対する賠償金は性質が異なります。保険を検討する際にも、両者を分けて補償内容を確認することが大切です。

6. 業務停止による損失と再発防止のための支出

サイバー攻撃によって受発注システムや生産管理システムなどが停止すると、復旧作業に費用がかかるだけでなく、通常どおりに営業できないことによる影響も考えられます。

例えば、次のような影響です。

  • 受注や出荷の遅延
  • 生産やサービス提供の停止
  • 売上や利益の減少
  • 代替手段を確保するための追加費用
  • 再発防止のためのシステム・運用体制の見直し

ここで注意したいのは、売上の減少と、実際の利益損失は同じではないということです。また、業務停止による損失が保険の補償対象になるかどうかは、契約内容や事故の原因などによって異なります。

さらに、再発防止のためにセキュリティ機器やサービスを導入したり、社内規程や対応マニュアルを整備したりすることも考えられます。こうした支出が保険で補償されるとは限らないため、事故対応費用とは分けて考える必要があります。

7. 公的な事例から考える被害費用

IPAが2026年3月に公表した「中小企業のための 実例で学ぶサイバーセキュリティリスク事例集」では、ランサムウェア感染・ファイル暗号化などの事例について、費用の想定例が掲載されています。

同資料の被害事例1では、VPN装置の脆弱性を悪用してランサムウェアに感染し、ファイルが暗号化されたケースについて、初期対応・原因調査、復旧、対応、弁護士・訴訟、再発防止などの費用を積み上げています。費用損害の想定額は約4,595万円です。

ただし、これは特定の条件を置いて計算した想定事例であり、一般的な中小企業の平均被害額ではありません。また、資料では利益損害や賠償損害、詐欺被害額などを含まないことが明記されています。

この数字から大切なのは、すべての企業で同じ金額の被害が発生するということではありません。事故の規模や対象となる機器、必要な調査・復旧作業によって、費用が大きく変わり得るという点です。

参考:IPA「中小企業のための 実例で学ぶサイバーセキュリティリスク事例集」

8. サイバー保険を検討する際に確認したいこと

サイバー保険を検討する際は、「サイバー攻撃に対応している保険か」という点だけでなく、事故後に発生し得る費用や損失が、どこまで補償対象となるかを確認することが重要です。

  • 原因調査や初動対応にかかる費用は対象となるか
  • データやシステムの復旧費用は対象となるか
  • 顧客・取引先への対応費用は対象となるか
  • 弁護士費用や損害賠償責任は対象となるか
  • 業務停止による利益損失や追加費用は対象となるか
  • 免責金額、支払限度額、対象となる事故の条件はどうなっているか
  • 事故発生時の連絡先や、保険会社の承認が必要な手続きは何か

補償内容は商品や契約プラン、特約、事故の状況などによって異なります。事故対応のために外部業者へ依頼する場合も、費用を支出する前に保険会社への連絡や承認が必要となることがあるため、契約時に確認しておきましょう。

複数の保険会社の商品を比較する際は、補償項目の名称だけで判断せず、具体的にどの費用が、どのような条件で対象になるのかを確認することが大切です。

中小企業向けサイバー保険5社を比較!補償内容と選び方を解説

9. 保険だけでなく、事故発生時の備えも確認する

サイバー攻撃による被害を考える際は、保険の補償内容を確認するだけでなく、事故が起きたときに会社として対応できるかも重要です。

例えば、次の項目を平時から確認しておくと、いざというときの判断に役立ちます。

  • システム管理会社や保守会社の連絡先が分かるか
  • 事故が疑われた場合の社内連絡先や責任者が決まっているか
  • バックアップからの復旧手順を把握しているか
  • 顧客・取引先への連絡や社外公表の判断手順があるか
  • 加入している保険の事故受付窓口と連絡手順を把握しているか

すべてを一度に整える必要はありません。まずは、事故が起きた際に誰に連絡し、何を確認するのかを整理することから始められます。

まとめ:事故後に必要となる費用を、平時から考えておく

サイバー攻撃の被害後には、原因調査、システム復旧、顧客対応、法的対応、業務停止による損失など、さまざまな費用や影響が発生する可能性があります。

実際の金額や必要な対応は、事故の内容や被害範囲、会社のシステム環境などによって異なります。そのため、一般的な金額だけで判断するのではなく、自社でどのような業務が止まる可能性があるか、復旧にどの程度の対応が必要かを考えておくことが大切です。

そのうえで、日頃のセキュリティ対策、事故発生時の対応手順、サイバー保険の補償内容をあわせて確認しておくと、自社の備えを見直すきっかけになります。

保険は重要な備えの一つですが、すべての費用や損失が必ず補償されるわけではありません。契約内容を確認しながら、自社に必要な対策を検討していきましょう。

参考資料

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