現場目線で企業リスクを可視化する調査・リスクマネジメント

ランサムウェア被害の実態――菱機工業で経済的損失2億円超

ランサムウェア被害の実態――菱機工業で経済的損失2億円超

●事案の基本情報

建築設備工事を手がける菱機工業株式会社(石川県金沢市、資本金1億円、従業員387人〈会社概要掲載値〉)は、2022年11月17日、ランサムウェア「LockBit 2.0」の攻撃を受けた。資本金が建設業の基準(3億円以下)を満たすため、中小企業基本法上の中小企業に該当する。 

●被害概要と侵入経路

攻撃者は、サポート期限を過ぎたSSL-VPN装置から社内ネットワークに侵入した。管理者権限を奪取してウイルス対策ソフトを無効化し、約6時間で多数のサーバーや端末を暗号化した。物理PC12台、仮想デスクトップ約70台、ファイルサーバーが被害を受け、通常業務に支障が生じた。

●企業が被った実質損害

外部専門業者による調査・復旧支援やシステム再構築など、初期の事故対応費用は約3,000万円に上った。

再発防止策などを含む費用は7,000万〜8,000万円に達し、業務効率低下に伴う人件費なども含めた経済的損失は2億円を超えた。

取引先への支払いに必要な基幹系データは約1日半で復旧したものの、通常どおり社内システムを利用できるまで約1か月半を要し、その間の業務効率は通常時の約50%に低下した。リモートアクセスの制限は翌年3月中旬まで続いた。

また、数百社に上る請負先の一部には、注文期日を2週間延期するよう依頼するなど、取引先への影響も生じた。

●事故原因・企業側の盲点

侵入口となったSSL-VPN装置はサポート期限切れだったが、後継機種の納期が半年以上先になるため交換を先送りしていた。一部のバックアップも暗号化されており、外部接続機器の更新管理、特権アカウントの保護、バックアップの隔離が課題となった。

●中小企業が現場で取るべき予防策・教訓

・VPNなど外部接続機器の更新期限を管理し、交換が遅れる場合は接続制限などの暫定対策を講じる。

・管理者権限を必要最小限に絞り、多要素認証と不正利用の監視で被害拡大を防ぐ。

・バックアップを本番環境から隔離して保管し、定期的に復元できることを確認する。

・取引先への支払いなど優先業務を定め、システム停止時の代替手順と連絡体制を整備する。

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