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情報漏えいの訴訟費用はサイバー保険で補償される?注意点を解説

情報漏えいの訴訟費用はサイバー保険で補償される?注意点を解説

「顧客情報が漏えいし、損害賠償を請求されたら、弁護士費用や裁判費用はサイバー保険で補償されるのだろうか」。顧客の個人情報を預かる中小企業の社長にとって、確認しておきたい問題です。

2026年10月、タイムズカーの情報漏えい事件をめぐり、被害を受けたとする顧客らによる集団訴訟の準備が報じられました。10月26日の弁護士会見では、1人当たり3万円から5万円の損害賠償を請求する方針が示されています。

ただし、これは請求予定額であり、裁判所が認めた賠償額ではありません。また、タイムズカー側のサイバー保険の加入状況や、今回の事故について保険金が支払われるかどうかは、この情報から判断できません。

この記事では、情報漏えいによる損害賠償請求や訴訟が発生した場合、サイバー保険でどのような費用が補償対象になり得るのかを解説します。弁護士費用、見舞金、事故調査費用、免責金額、保険会社への連絡など、契約確認に役立つ実務上のポイントも整理します。

この記事の結論

サイバー保険には、情報漏えいに伴う法律上の損害賠償金や、訴訟・示談交渉の弁護士費用などを補償する商品があります。しかし、すべての契約に同じ補償が付いているわけではありません。支払限度額、免責金額、補償対象となる事故、保険会社の事前同意などを確認することが重要です。

目次|情報漏えいの訴訟費用とサイバー保険
  1. タイムズカーで訴訟が検討されている背景
  2. 情報漏えい後に企業へ発生する費用
  3. サイバー保険の賠償責任補償とは
  4. 弁護士費用・訴訟費用は補償されるのか
  5. 見舞金3,000円は補償されるのか
  6. 調査費用・通知費用との違い
  7. 支払限度額と免責金額を確認する
  8. 補償されない場合がある主な理由
  9. 弁護士へ依頼する前に確認したいこと
  10. 訴訟を起こされた場合の対応手順
  11. 建設業・製造業などでも確認が必要な理由
  12. 社長が確認したい10項目
  13. まとめ|保険証券だけでなく約款を確認する

1.タイムズカーで訴訟が検討されている背景

パーク24は2026年10月23日、タイムズカーのWebシステムへの不正アクセスについて調査結果を公表しました。暗号化された本人確認書類画像データのうち、146万4,800件に外部送信の痕跡が確認されたとしています。

同社は、対象となる顧客に3,000円相当の見舞金を渡す方針を発表しました。一方、10月26日には被害者側の弁護士が会見を開き、運営会社などに対して損害賠償を求める訴訟を提起する方針を明らかにしました。

報道によると、請求予定額は本人確認書類画像が対象となった人について1人5万円、それ以外の人について1人3万円とされています。ただし、これは弁護士側の請求方針であり、法的責任や賠償額が裁判で確定したものではありません。

訴訟の状況を正確に理解する

2026年10月27日時点で確認した報道では、集団訴訟の提起に向けた準備が進められています。参加希望者数と実際の原告数は同じとは限らず、請求予定額を裁判所の認定額として扱うこともできません。

企業公式:パーク24|情報漏えいに関する第5報

訴訟準備に関する報道:弁護士ドットコムニュース|集団訴訟の準備状況

2.情報漏えい後に企業へ発生する費用

情報漏えい事故で企業が負担する可能性のある費用は、損害賠償金だけではありません。原因調査、システムの復旧、顧客への通知、問い合わせ窓口の設置など、複数の費用が発生する場合があります。

国のサイバーセキュリティ関係法令Q&Aハンドブックでも、サイバー事故による損害や費用として、個人情報漏えいに伴う損害賠償、フォレンジック調査、顧客対応、訴訟の専門家費用などが整理されています。

費用の種類 具体例 確認する補償
損害賠償金 顧客や取引先への法律上の賠償 賠償責任補償
争訟費用 訴訟・示談交渉に伴う弁護士費用など 賠償責任に関する争訟費用
事故調査費用 フォレンジック調査、原因調査 事故対応費用
顧客対応費用 通知、コールセンター、相談対応 事故対応費用
見舞金 顧客へ自主的に渡す金銭や金券 見舞金に関する補償の有無
システム復旧費用 データ復旧、システム再構築 復旧費用に関する補償
営業停止による損失 システム停止に伴う利益の減少 事業中断に関する補償

この表は一般的な費用区分を整理したものであり、各項目がすべてのサイバー保険で補償されることを意味しません。商品や特約によって、対象となる費用と条件は異なります。

公的資料:サイバーセキュリティ関係法令Q&Aハンドブック|Q65 インシデント対応の費用負担とサイバー保険

3.サイバー保険の賠償責任補償とは

サイバー保険の賠償責任補償は、一定のサイバー事故に起因して、企業が第三者に対する法律上の損害賠償責任を負う場合などを想定した補償です。情報漏えいによる顧客からの損害賠償請求が、補償対象となる場合があります。

例えば、東京海上日動のサイバーリスク保険の公式案内では、法律上の損害賠償金、賠償責任に関する争訟費用、保険会社の求めに応じるための協力費用が補償項目として示されています。

ただし、損害賠償を請求されたという事実だけで、保険金の支払いが確定するわけではありません。事故が補償対象に該当するか、法律上の賠償責任があるか、免責事由がないかなどを確認する必要があります。

経営者が確認したいこと

保険証券に「サイバー保険」と書かれていても、それだけでは具体的な補償内容は分かりません。賠償責任補償の有無と、適用される約款・特約を確認しましょう。

保険会社公式:東京海上日動|サイバーリスク保険・損害賠償責任に関する補償

4.弁護士費用・訴訟費用は補償されるのか

サイバー保険には、損害賠償責任に関する訴訟や示談交渉の弁護士費用などを、争訟費用として補償する商品があります。裁判になった場合だけでなく、訴訟前の示談交渉が対象となる契約もあります。

ただし、弁護士に依頼した費用がすべて無条件で支払われるわけではありません。東京海上日動の公式案内では、保険会社の同意を得て支出した弁護士費用や訴訟費用などが争訟費用として示されています。

確認したい3つの点

  1. 賠償責任に関する争訟費用が補償対象か
  2. 弁護士の選任や費用の支出に保険会社の同意が必要か
  3. 争訟費用が支払限度額に含まれるか

特に、保険会社への連絡前に弁護士へ正式依頼した場合の取扱いは、契約条件によって異なります。事故発生時には、必要な初動対応を進めながら、保険会社にも速やかに連絡しましょう。

事前同意の条件に注意

賠償責任を認めたり、示談金額を決めたり、弁護士費用を支出したりする前に、保険会社の同意が必要な契約があります。顧客対応を止める必要はありませんが、金銭的な約束や専門家への正式依頼は、契約条件を確認して進めることが重要です。

5.見舞金3,000円は補償されるのか

タイムズカーの事例では、パーク24が一定の対象者へ3,000円相当の見舞金を渡す方針を公表しました。この見舞金がサイバー保険の対象になるかどうかは、同社の契約内容などが確認できないため判断できません。

一般に、企業が自主的に支払う見舞金と、法律上の損害賠償責任に基づいて支払う賠償金は、区別して考える必要があります。サイバー保険の中には、見舞金に関する費用を一定の条件で補償する商品もありますが、すべての契約で対象となるわけではありません。

見舞金を検討する際は、支払う趣旨、対象者、金額、支払い方法などを整理し、保険会社へ確認することが大切です。見舞金の支払いが、その後の損害賠償請求や示談にどのような影響を与えるかについても、必要に応じて法律の専門家に相談しましょう。

見舞金と保険金を混同しない

企業が見舞金を支払うと決めたことと、その費用を保険会社が負担することは別の問題です。保険による補償を前提に見舞金を約束する前に、契約条件と保険会社の確認を行いましょう。

6.調査費用・通知費用との違い

情報漏えい事故では、損害賠償請求が発生する前から費用が必要になる場合があります。例えば、侵入経路を調べるフォレンジック調査、顧客への通知、問い合わせ窓口の設置などです。

こうした費用は、損害賠償責任の補償とは別に、事故対応費用として扱われる商品があります。賠償責任補償があるからといって、調査費用や通知費用もすべて対象になるとは限りません。

費用 発生する場面 確認したい点
フォレンジック調査 侵入経路や影響範囲の調査 調査会社の選定、事前承認、限度額
顧客通知 対象者への郵送・連絡 通知費用の補償条件
問い合わせ窓口 電話や相談の受付体制 外部委託費用などの取扱い
法律相談 行政報告や顧客対応の判断 事故対応費用か争訟費用か
訴訟対応 損害賠償請求への対応 賠償責任補償と争訟費用

同じ弁護士費用でも、事故発生直後の法律相談と、損害賠償訴訟への対応では、適用される補償項目が異なる場合があります。費用の名称だけで判断せず、何のために支出する費用なのかを整理しましょう。

7.支払限度額と免責金額を確認する

サイバー保険では、補償対象となる事故であっても、保険金の支払いには限度額や免責金額などの条件があります。契約によっては、損害賠償金と争訟費用を合算して支払限度額を適用する場合があります。

東京海上日動の公式案内でも、賠償責任に関する補償について、損害賠償金や争訟費用などを合算して保険期間中の支払限度額を適用する仕組みが示されています。実際の条件は契約内容によって異なります。

仮定の例で考える

以下は保険金の支払いを説明するための架空の例です。実際の保険商品や今回のタイムズカー事件の支払額を示すものではありません。

仮定した条件 金額
損害賠償金 300万円
弁護士費用 100万円
合計費用 400万円
仮定した保険期間中の支払限度額 300万円

仮に両方の費用が補償対象で、同じ300万円の限度額を共有する契約であれば、400万円すべてが保険金として支払われるとは限りません。さらに、免責金額や他の保険金支払い状況などによって、実際の支払額は変わります。

限度額の見落としに注意

「賠償責任の限度額」と「争訟費用の限度額」が別々なのか、合算されるのかを確認しましょう。事故対応費用や事業中断の補償にも、それぞれ条件が設けられている場合があります。

8.補償されない場合がある主な理由

サイバー保険では、事故が発生したという事実だけで、すべての損害や費用が補償されるわけではありません。約款には、保険金を支払わない場合や、支払いに条件が付く場合が定められています。

例えば、東京海上日動の公式案内では、契約者または被保険者の故意による損害などが、主な免責事由として挙げられています。ただし、免責事由の詳細は商品や契約時期、特約などによって異なります。

確認したい代表的な項目

  • 事故が補償対象となるサイバー事故に該当するか
  • 法律上の損害賠償責任が問題となる事案か
  • 契約上の免責事由に該当しないか
  • 保険期間や事故・請求の通知条件を満たしているか
  • 保険会社の同意が必要な費用か
  • 支払限度額や免責金額の条件を満たしているか
  • 特約の有無によって補償対象が変わらないか

これらは確認事項の例であり、該当しただけで必ず不払いになるという意味ではありません。実際の支払可否は、事故の事実関係と適用される約款に基づいて判断されます。

9.弁護士へ依頼する前に確認したいこと

情報漏えい事故で損害賠償請求を受けた場合、弁護士への相談が必要になることがあります。その際、サイバー保険に加入している企業は、保険会社への連絡と契約条件の確認を早めに進めることが重要です。

ただし、法的な対応に期限がある場合や緊急の保全措置が必要な場合は、保険会社からの回答を待つことで必要な対応が遅れないよう注意しましょう。緊急性を説明したうえで、保険会社と専門家の双方に速やかに相談することが大切です。

依頼前に整理したい事項

  1. 損害賠償請求を受けた日時と内容
  2. 請求書や通知書などの書類
  3. 事故の発生・発覚日時
  4. 対象となる個人情報と影響範囲
  5. すでに実施した顧客対応
  6. サイバー保険の証券番号と補償内容
  7. 保険会社への連絡状況
実務上の重要ポイント

顧客から損害賠償を請求されたら、請求内容を記録し、関連書類を保管しましょう。賠償責任の承認や金額の合意を急がず、必要に応じて保険会社と弁護士へ相談してください。

10.訴訟を起こされた場合の対応手順

損害賠償請求が訴訟に発展した場合、裁判所から届く書類への対応には期限があります。書類を放置すると、企業に不利益が生じる可能性があるため、受領した日と内容を確認し、速やかに専門家へ相談することが重要です。

また、訴訟に関係する事故記録、顧客への通知、システムの調査結果などは、適切に保全する必要があります。調査に必要な記録を不用意に削除しないよう注意しましょう。

対応の基本的な流れ

  1. 訴状や請求書類を受領した日時を記録する
  2. 提出期限や対応期限を確認する
  3. 保険会社へ速やかに事故・請求内容を連絡する
  4. 弁護士へ相談し、対応方針を検討する
  5. 事故調査資料や顧客対応記録を保全する
  6. 保険会社の同意が必要な費用や手続きを確認する
  7. 訴訟対応と顧客への説明を適切に進める

実際の訴訟手続きは、請求内容や裁判所の指示によって異なります。保険に加入している場合でも、訴訟書類を放置せず、期限を守ることが大切です。

11.建設業・製造業などでも確認が必要な理由

情報漏えいによる損害賠償の問題は、カーシェアリングのような会員サービスだけに限りません。建設業や製造業でも、従業員、協力会社、取引先、顧客の個人情報や機密情報を扱う場合があります。

例えば、建設業では協力会社の従業員情報や現場入場に関する情報、製造業では取引先の担当者情報や設計・取引に関する機密情報などを管理している場合があります。これらの情報が漏えいした際、事故の内容によっては損害賠償請求や調査費用が問題になる可能性があります。

業種・業務 扱う情報の例 確認したいリスク
建設業 協力会社の従業員情報、現場入場記録 個人情報の漏えい、委託先管理
製造業 取引先情報、技術資料 機密情報の漏えい、契約上の責任
小売・サービス業 顧客名簿、予約情報 顧客対応、損害賠償請求
医療・福祉関連 患者・利用者の個人情報 情報の機微性、事故対応

なお、個人情報と企業の営業秘密では、法的責任や保険の補償条件が異なる場合があります。自社が保有する情報の種類を把握し、それぞれにどのような補償が必要かを確認することが重要です。

12.社長が確認したい10項目

サイバー保険に加入している場合も、未加入の場合も、次の10項目を確認してみてください。保険の名称だけで判断せず、事故が起きたときにどのような費用が必要になるかを考えることが大切です。

  1. 自社がサイバー保険に加入しているか把握している
  2. 賠償責任補償の有無を確認している
  3. 弁護士費用・争訟費用の補償条件を確認している
  4. 見舞金が補償対象となるか確認している
  5. フォレンジック調査費用の補償条件を確認している
  6. 顧客通知や問い合わせ窓口の費用を確認している
  7. 支払限度額と免責金額を把握している
  8. 保険会社の事前同意が必要な手続きを確認している
  9. 事故発生時の保険会社への連絡先を把握している
  10. 損害賠償請求を受けた場合の社内対応手順を決めている
今日から始める3つの確認

  1. 保険証券と約款を確認し、賠償責任補償の有無を調べる
  2. 争訟費用と事故対応費用の支払条件を確認する
  3. 事故発生時の保険会社への連絡先を控えておく

13.まとめ|保険証券だけでなく約款を確認する

タイムズカーの情報漏えい事件では、被害者側の弁護士が損害賠償請求に向けた訴訟準備を進めていることが報じられています。しかし、請求予定額がそのまま認められるとは限らず、運営会社の保険加入状況や保険金支払いについても確認できていません。

サイバー保険には、法律上の損害賠償金や、訴訟・示談交渉の弁護士費用などを補償する商品があります。一方で、見舞金、事故調査費用、顧客通知費用などは、別の補償項目や条件で扱われる場合があります。

中小企業の社長が確認したいのは、「サイバー保険に入っているか」だけではありません。何が補償対象で、どの費用に限度額や免責金額があり、どの手続きに保険会社の同意が必要なのかを把握しておくことが重要です。

まずは、保険証券と約款を手元に用意し、賠償責任補償、争訟費用、事故対応費用の三つを確認してみてください。事故が起きる前に条件を理解しておくことが、万一の際の判断に役立ちます。

参考にした一次情報・報道

※2026年10月27日時点で確認できる公表情報に基づく解説です。保険会社の商品説明は補償の一例であり、すべてのサイバー保険に同じ条件が適用されるわけではありません。実際の保険金支払可否は、適用される約款、特約、契約条件および事故の事実関係に基づいて判断されます。

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