「警視庁捜査二課です。今、お時間よろしいですか」
仕事中、社長の携帯電話に突然こんな連絡が来たら、どう対応しますか。
実際に、同じ経営者のもとへ、警察官を名乗る不審電話が2回かかってきました。
どちらも香川県警から捜査協力の要請を受けたと説明していましたが、相手の氏名や話の内容には違いがありました。
1件目では「一人で話してほしい」「録音は禁止」と説明され、2件目では「本人名義の銀行カードが事件で見つかった」と告げられました。
ただし、相手が本物の警察官だったか、説明された事件が実在したかは確認できていません。
この記事では、録音で確認できた事実と一般的な詐欺対策を区別しながら、経営者自身の対応、経理担当者への注意喚起、社内で共有すべきルールを整理します。
- 実際の不審電話2件に共通していた特徴
- 社長がその場で判断してはいけない理由
- 警察の公式窓口で確認する手順
- 経理担当者と社員に共有すべき対応ルール
- 5分で実施できる社内防犯チェック
目次|クリックで開閉できます
1.実際に社長へかかってきた2件の不審電話
今回の事例は、実際の通話録音に基づいています。
2件とも捜査二課を名乗り、香川県警からの捜査協力要請を理由に連絡してきました。
| 比較項目 | 1件目 | 2件目 |
|---|---|---|
| 名乗った所属 | 警視庁捜査二課 | 捜査二課 |
| 名乗った氏名 | 永田 | 高田 |
| 連絡理由 | 香川県警からの捜査協力要請 | 香川県警からの捜査協力要請 |
| 特徴的な発言 | 一人で話すよう求め、録音を禁止すると説明 | 本人名義の銀行カードが押収されたと説明 |
| 確認できないこと | 相手の身元、捜査の実在 | 相手の身元、カード押収の事実 |
同じ経営者に似た電話が繰り返しかかってきたことは確認できます。ただし、同じ人物や同じ犯罪グループによる電話だったとは断定できません。
また、録音で確認できた範囲では、送金や暗証番号の提供を要求された場面はありません。
2.なぜ経営者への不審電話に注意が必要なのか
中小企業では、社長自身が金融機関との連絡、資金管理、取引先との交渉などを担う場合があります。
そのため、社長が電話口で重要な情報を伝えたり、送金を判断したりすると、会社全体に影響する可能性があります。
例えば、警察を名乗る人物から「会社の口座が事件に関係している」と説明されたとします。
社長がその場で経理担当者へ資金移動を指示してしまえば、電話の相手が誰かを確認する前に会社の資金が動くおそれがあります。
これは今回の録音で実際に起きたことではなく、会社として想定しておきたいリスクの例です。
重要なのは、経営者自身にも確認手順を適用することです。
3.警察を名乗る電話で注意したい5つの兆候
実際の録音と一般的な注意点から、次の5つを確認しておきましょう。
- 警察の所属や役職を強調する:肩書だけでは身元を確認できません。
- 遠方の事件への協力を求める:連絡理由を聞いても、その場で訪問や対応を約束しないことが大切です。
- 一人で話すよう求める:周囲に相談する機会を失うおそれがあります。
- 録音や相談を制限しようとする:確認の機会を減らす要求には注意が必要です。
- 本人名義の銀行カードなどを持ち出す:犯罪への関与を心配させる説明でも、電話だけで事実と判断しないことが重要です。
これらの発言があっただけで詐欺と確定するわけではありません。しかし、相手の身元が確認できないなら、会話を続ける前に公式窓口へ確認しましょう。
4.社長が電話を受けた直後の対応
警察官を名乗る電話を受けた際は、次の順番で対応します。
① その場で個人情報を伝えない
氏名や住所を相手が知っていても、口座番号、暗証番号、認証コード、会社の資金情報などを追加で伝えないようにします。
② 重要な約束をしない
遠方の警察署への訪問、送金、アプリのインストールなどを、その場で約束しないことが重要です。
③ 通話を終了する
「公式窓口に確認してから対応します。いったん失礼します」と伝えれば十分です。
④ 自分で連絡先を調べる
相手から教えられた番号ではなく、警察の公式サイトなどに掲載された連絡先を利用します。
相手を言い負かしたり、嘘を見破ろうとして会話を長引かせたりする必要はありません。
5.警察の公式窓口へ確認する方法
不審電話の相手が警察官を名乗った場合でも、着信番号や名乗った氏名だけで本物と判断しないでください。
まず電話を切り、警察の公式サイトなどで連絡先を確認します。
緊急の危険がある場合は110番、緊急でない相談には警察相談専用電話「#9110」などを利用できます。
確認時には、着信日時、相手が名乗った所属、説明された事件、求められた行動を伝えると状況を整理しやすくなります。
会社として連絡先を整理する考え方は、関連記事サイバー事故に備える緊急連絡体制の準備でも紹介しています。
6.会社の銀行口座を守るための対応
警察を名乗る電話で銀行口座の話が出た場合、社長が最初にすべきことは、相手の説明に従って資金を動かすことではありません。
会社で利用している金融機関の正規窓口に確認し、不審な取引やログインがないか調べることです。
具体的には、次の事項を確認します。
- 身に覚えのない入出金がないか
- インターネットバンキングの不審なログイン通知がないか
- 銀行カードや通帳を紛失していないか
- 送金先の登録や認証設定に不審な変更がないか
確認には、金融機関の公式アプリや正規窓口を利用してください。
電話の相手が送ってきたURLやQRコードからログインしないことも大切です。
7.経理担当者が受けた場合のルール
経理担当者は、会社の口座番号、振込先、請求書など重要な情報を扱っています。
そのため、警察や金融機関を名乗る電話であっても、次のルールを徹底します。
- 電話だけで口座番号や認証コードを伝えない
- 相手の指示だけで送金しない
- 振込先の変更は、既知の連絡先で再確認する
- 社長からの指示に見えても、通常の承認手順を省略しない
- 不審な連絡は社長や決められた担当者へ報告する
特に、社長の名前を使った送金指示についても、電話だけで判断しない仕組みが必要です。
8.社員が不審電話を受けた場合の報告手順
代表電話を受ける社員や営業担当者にも、共通の対応ルールを決めておきましょう。
基本は「電話を切る・確認する・共有する」の三段階です。
| 段階 | 社員の対応 | 会社側の役割 |
|---|---|---|
| 電話を切る | 相手に重要情報を伝えず通話を終了 | 社員が通話を切る判断を認める |
| 確認する | 公式窓口へ連絡し、必要な事実を確認 | 確認先を事前に整備する |
| 共有する | 日時、着信番号、要求内容を報告 | 社内で注意喚起し、必要な対応を判断する |
社員が報告をためらわないよう、不審電話を受けたこと自体を責めないことも重要です。
9.社長不在時にも機能する社内体制
社長が外出中や出張中でも、会社には電話がかかってきます。
社長が不在のたびに対応が止まったり、社員が独断で判断したりしないように、報告先を複数決めておきましょう。
例えば、一次報告先を総務責任者、二次報告先を社長とするなど、会社の規模に合った運用が考えられます。
また、電話で受けた情報を社内チャットやクラウドに記録する場合には、個人情報や銀行口座情報を不必要に広く共有しない配慮が必要です。
外部サービスを利用する際の情報管理については、クラウドサービス・外部事業者を利用する際のリスクも参考になります。
10.不審電話の記録と録音の扱い
今回の事例では、録音が残っていたため、2件の電話の共通点と違いを確認できました。
しかし、録音には氏名、電話番号、別の業務会話などが含まれる場合があります。
会社では、必要な記録を安全に保管することが大切です。
- 着信日時、表示番号、名乗った所属を記録する
- 相手から求められた内容をメモする
- 録音がある場合は元のファイルを安全に保存する
- 録音へのアクセスを必要な担当者に限定する
- 外部公開する際は個人情報や無関係な音声を除外する
また、相手が名乗った名前を、実在する警察官の名前として断定しないことも重要です。
11.社内共有に使える短い注意喚起文
社員向けの注意喚起は、長い説明よりも、すぐに行動できる内容が役立ちます。
警察官や金融機関を名乗る不審電話にご注意ください。
「捜査への協力」「銀行口座が事件に関係している」などと言われても、その場で個人情報や口座情報を伝えないでください。
いったん電話を切り、公式窓口で確認したうえで、社内の担当者へ報告してください。
不審な電話を受けた際は、一人で判断せず、早めに共有をお願いします。
この文章を、朝礼、社内メール、チャットなどで共有できます。
重要なのは、社員が実際に使える短いルールにすることです。
12.情報やお金を渡してしまった場合の初動
不審電話で情報を伝えたり、相手の指示に従ったりしてしまった場合には、状況に応じて速やかな対応が必要です。
銀行口座や認証情報を伝えた場合
金融機関の正規窓口に連絡し、利用停止や認証情報の変更など必要な対応を確認します。
送金してしまった場合
金融機関と警察へ速やかに連絡し、振込先や取引時刻などを伝えます。
不審なアプリをインストールした場合
端末の安全確認が必要です。業務用端末であれば社内の情報管理担当者にも報告してください。
社員のアカウント情報を伝えた場合
管理者へ報告し、認証情報の変更、ログイン履歴の確認、必要に応じたアカウント保護を進めます。
こうした情報セキュリティ事故への備えについては、中小企業のサイバー保険と実務対策も参考になります。
なお、不審電話や詐欺による損害が、必ずサイバー保険で補償されるわけではありません。補償の有無は契約内容や事故状況によって異なります。
13.社長向けチェックリストと今日の一歩
最後に、会社で確認したい項目を整理します。
- □ 警察を名乗る電話でも公式窓口で確認する
- □ 社長自身も電話だけで重要な判断をしない
- □ 経理担当者が口座情報を電話で伝えない
- □ 送金や振込先変更の承認ルールがある
- □ 社員が不審電話を報告できる担当者がいる
- □ 社長不在時の報告先も決まっている
- □ 金融機関の公式連絡先を確認できる
- □ 不審電話の日時や要求内容を記録できる
- □ 録音や通話記録を安全に保管できる
- □ 社員への注意喚起を定期的に実施している
社長から社員へ、次の一言を共有してください。
「警察を名乗る電話でも、その場で判断しない。いったん切って、公式窓口で確認し、社内で共有する」
不審電話を完全に防ぐことは難しくても、会社として対応手順を決めておくことはできます。
社長だけが注意するのではなく、社員全員が同じ行動を取れる状態にすることが、会社を守るための実用的な備えになります。

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