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工場のデジタル化で増えるセキュリティ課題と社長が確認すべき対策

工場のデジタル化で増えるセキュリティ課題と社長が確認すべき対策

「社長、工場のデジタル化を進めるとき、セキュリティ対策も一緒に見直していますか」。生産設備の稼働状況をパソコンで確認したり、クラウドで生産データを分析したりする仕組みは、製造業の業務改善に役立ちます。

一方、工場のデジタル化が進むと、ネットワークにつながる機器や外部サービス、システムを利用する担当者が増える場合があります。便利な仕組みが増えるほど、接続先やアクセス権限、更新状況など、確認すべき管理項目も広がります。

ただし、デジタル化そのものが危険というわけではありません。重要なのは、業務改善とセキュリティ対策を別々に考えず、導入時から一緒に検討することです。

この記事の結論

工場のデジタル化を進める際は、新しく導入する機器やサービスについて「何につながるか」「誰が管理するか」「問題が起きたら誰に連絡するか」を確認しましょう。最初から管理体制を決めておくことが、デジタル化の効果を安全に活用する第一歩です。

目次|工場のデジタル化で増えるセキュリティ課題[開く/閉じる]
  1. 工場のデジタル化とは何か
  2. デジタル化で変わる工場の仕組み
  3. 課題① 接続機器の増加
  4. 課題② クラウドと生産データの管理
  5. 課題③ 遠隔保守と外部接続
  6. 課題④ ITとOTの接続拡大
  7. 課題⑤ 管理責任者と権限の不明確さ
  8. デジタル化に伴う業務への影響
  9. 導入前に確認したいセキュリティ項目
  10. 中小製造業が取り組める基本対策
  11. 異常が発生したときの対応
  12. 社長のための10項目チェックリスト
  13. まとめ|導入前に管理責任者を決める

1.工場のデジタル化とは何か

工場のデジタル化とは、生産設備や業務の情報をデジタル技術で収集・活用し、業務改善につなげる取り組みです。例えば、設備の稼働状況を自動で記録したり、検査結果を電子化したり、生産計画をシステムで管理したりする方法があります。

さらに、複数の設備から集めたデータを分析し、設備の保守時期や生産効率の改善に役立てる取り組みもあります。こうした仕組みは、一般にスマート工場化や工場DXの一部として説明されます。

デジタル化の内容は企業によって異なります。すべての工場がクラウドやAIを利用しているわけではなく、自社の規模や目的に合った導入が大切です。

2.デジタル化で変わる工場の仕組み

従来は設備ごとに独立して管理していた情報を、ネットワーク経由で集める仕組みが増えると、工場全体の状況を把握しやすくなります。一方で、データを集める機器や保存先、通信経路なども管理対象になります。

デジタル化の例 期待できる効果 確認したいセキュリティ課題
設備のIoT化 稼働状況の把握 接続機器と通信先の管理
クラウド連携 データ共有・分析 アクセス権限と保存先
生産管理システム 工程や進捗の管理 業務停止時の代替手順
遠隔保守 保守対応の効率化 外部接続と認証の管理
監視カメラ・センサー 現場状況の確認 機器設定と更新状況
データ分析・AI活用 品質や生産性の改善 利用データと提供先の確認

この表は一般的な例であり、導入効果やリスクは設備構成と運用条件によって異なります。大切なのは、導入する技術ごとに管理対象を確認することです。

3.課題① 接続機器の増加

工場のデジタル化では、設備の状態を記録するセンサー、データを集める通信機器、監視カメラなどが追加される場合があります。こうした機器が増えると、どの機器がどのネットワークにつながっているか把握しにくくなることがあります。

例えば、設備メーカーが設置した通信機器について、社内の情報システム担当者が存在を把握していない場合も考えられます。管理者が不明なままでは、更新や設定変更が必要になったときに対応が遅れるおそれがあります。

確認したい3つのこと

  • 新しく接続した機器を一覧に登録しているか
  • 機器の設置場所と通信先を把握しているか
  • 機器ごとの管理責任者を決めているか
最初に取り組みたい対策

工場内の機器をすべて一度に調べることが難しい場合は、新しく導入する機器から一覧化を始めましょう。機器名、設置場所、接続先、保守会社、管理責任者を記録するだけでも、管理の出発点になります。

4.課題② クラウドと生産データの管理

クラウドサービスを利用すると、工場の稼働データや生産実績などを社外から確認したり、複数拠点で共有したりできる場合があります。データの分析や情報共有に役立つ一方、誰がデータを閲覧・変更できるかを適切に管理する必要があります。

例えば、退職した担当者のアカウントが残っていたり、共有範囲が必要以上に広かったりすると、情報が不適切に利用される可能性があります。また、サービス障害や通信障害が発生した際に、現場業務をどのように継続するかも確認しておきたい項目です。

クラウド利用時の確認事項

  • どの生産データをクラウドへ保存するか
  • 誰が閲覧・変更・ダウンロードできるか
  • 多要素認証などの対策を利用できるか
  • 障害時に必要なデータへアクセスできるか
  • 契約終了時にデータをどう扱うか

クラウドの利用そのものが危険というわけではありません。サービスの機能や契約条件を確認し、自社が管理すべき設定と提供事業者の役割を整理することが大切です。

5.課題③ 遠隔保守と外部接続

設備メーカーや保守会社が遠隔から設備の状態を確認できる仕組みは、現場への訪問を待たずに状況を把握できるなど、業務上の利点があります。一方、外部から接続できる経路が増えるため、利用者と接続範囲の管理が必要になります。

特に、過去に利用していた保守用アカウントが残っていないか、必要な機器だけに接続できる設定になっているかを確認しましょう。遠隔保守を利用する場合は、接続履歴や異常時の連絡体制も重要です。

遠隔接続を一律に停止しない

遠隔保守は、設備の安全確認や障害対応に必要な場合があります。不要な接続の見直しは重要ですが、通信を自己判断で遮断せず、設備メーカーや保守会社と相談して進めてください。

6.課題④ ITとOTの接続拡大

ITは、事務所のパソコンやサーバー、業務システムなどに関わる情報技術です。一方、OTは、生産設備や制御装置など、現場の機器を監視・制御する技術を指します。

工場のデジタル化では、ITとOTを連携させ、生産データを業務改善に活用する場合があります。ただし、接続が増えることで、システム障害や不正アクセスが及ぶ可能性のある範囲が変わることがあります。

ITへのサイバー攻撃が必ずOTに広がるわけではありません。実際の影響は、ネットワーク構成、アクセス制御、設備の安全機能などによって異なります。

連携時に確認したいこと

  • ITとOTの間でどのような情報をやり取りするか
  • どの機器から制御装置へアクセスできるか
  • 必要のない通信を制限しているか
  • 通信障害が発生した場合の設備動作を確認しているか

ネットワークの構成変更は、設備の安全や生産に影響する可能性があります。現場責任者と設備メーカーの確認を受けながら、計画的に進めることが重要です。

7.課題⑤ 管理責任者と権限の不明確さ

工場のデジタル化では、情報システム部門、生産部門、設備メーカー、クラウド事業者など、複数の関係者が関わる場合があります。便利な仕組みが増えても、管理責任が曖昧なままでは、設定の見直しや障害対応が遅れるおそれがあります。

例えば、通信機器の更新を誰が判断するのか、クラウドのアカウントを誰が削除するのか、異常時に誰へ連絡するのかを決めておくことが大切です。社内で対応できない業務は、外部の専門事業者と役割を整理しておきましょう。

管理体制で決めたい項目

  • 導入する機器・サービスの責任者
  • アカウントの発行・変更・削除の担当者
  • 更新や設定変更を承認する担当者
  • 保守会社・クラウド事業者の連絡先
  • 障害・事故時の社内報告先

8.デジタル化に伴う業務への影響

デジタル化した仕組みに障害が発生すると、生産データの収集や設備監視、作業指示などに支障が出る可能性があります。また、保存している図面や生産情報が不正に持ち出されると、情報管理上の問題が生じる場合もあります。

ただし、システム障害や不正アクセスが発生したからといって、必ず生産ラインが停止するわけではありません。影響は、システムへの依存度、代替手順、設備の構成によって異なります。

想定される問題 業務への影響例 事前に確認したいこと
クラウドサービスの障害 生産データの閲覧・共有ができない 代替手順とデータの確保
通信障害 設備監視や情報連携ができない 通信断時の運用手順
アカウントの不正利用 データへの無断アクセス 認証・権限・利用記録
機器の管理不足 更新遅れや設定不備の見落とし 機器一覧と管理責任者
生産データの消失 分析・管理業務への支障 バックアップと復元手順

これらは一般的に想定される影響であり、特定企業で発生した事故を示すものではありません。

9.導入前に確認したいセキュリティ項目

デジタル化のセキュリティ対策は、導入後に考えるよりも、導入計画の段階から確認することが重要です。設備やサービスを選ぶ際に、機能や価格だけでなく、接続方法、認証、更新、障害時の対応も確認しましょう。

導入前の確認ポイント

  1. 導入の目的と、扱うデータを明確にする
  2. 接続する機器と通信先を確認する
  3. 利用者とアクセス権限を決める
  4. 更新や保守の担当範囲を確認する
  5. 障害発生時の代替運用を考える
  6. サービス終了時のデータの扱いを確認する

経済産業省は、工場のスマート化を進める際の留意点をまとめたガイドライン別冊を公表しています。工場のデジタル化とセキュリティを一体で考える際の参考資料になります。

参考:経済産業省|工場システムのスマート化を進める上でのセキュリティ対策

10.中小製造業が取り組める基本対策

工場のデジタル化を安全に進めるために、必ずしも最初から大規模なシステムを導入する必要はありません。現在利用している機器やサービスを把握し、管理体制を整えることから始められます。

基本となる6つの対策

  1. 接続機器と利用サービスの一覧を作成する
  2. 外部接続とデータの保存先を把握する
  3. 管理責任者と保守会社の役割を決める
  4. 必要な利用者だけにアクセス権限を与える
  5. 重要データのバックアップと復元を確認する
  6. 障害・事故時の連絡体制と安全手順を整える

IPAの「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン第4.0版」では、経営者が認識すべき事項と実務上の対策が整理されています。2026年の改訂では、バックアップも基本的な対策として明確に取り上げられています。

参考:IPA|中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン

小さく始める対策

まずは、新しく導入した機器やクラウドサービスを一つ選び、「何につながるか」「誰が管理するか」「問題が起きたら誰に連絡するか」を確認してみてください。確認結果を一覧に残すことが重要です。

11.異常が発生したときの対応

工場のシステムに不審な通信や利用できない機能が見つかった場合は、まず人と設備の安全を確認してください。そのうえで、異常が確認された機器やサービス、発見時刻、影響している業務を整理し、社内責任者や保守会社へ連絡します。

異常の原因は、サイバー攻撃だけとは限りません。機器の故障、通信障害、設定変更なども考えられるため、確認できた事実を記録し、原因を決めつけずに調査を進めることが大切です。

設備の安全を最優先

PLCや制御装置などの通信を自己判断で切断したり、設備を再起動したりすると、安全や生産に影響する場合があります。現場の安全手順を優先し、設備メーカーや保守会社と相談して対応してください。

12.社長のための10項目チェックリスト

工場のデジタル化を進める際に、次の10項目を確認してみてください。社長自身が技術的な設定を行う必要はありません。現場責任者や担当者に確認することが第一歩です。

  1. 新しく導入した機器やサービスを一覧化している
  2. 各機器がどこへ接続しているか把握している
  3. クラウドへ保存するデータを確認している
  4. クラウドの利用者と権限を管理している
  5. 外部保守会社の接続範囲を把握している
  6. ITとOTの接続関係を確認している
  7. 機器やサービスの管理責任者が決まっている
  8. 更新や設定変更の担当者が決まっている
  9. 重要データのバックアップと復元手順がある
  10. 障害・事故時の連絡先と安全手順が決まっている
今日できる一つの行動

担当者に「最近導入したデジタル機器やクラウドサービスについて、管理責任者と接続先を説明できますか」と質問してみてください。答えが分からなければ、導入業者や保守会社と確認することから始めましょう。

13.まとめ|導入前に管理責任者を決める

工場のデジタル化は、生産状況の把握、品質管理、保守の効率化などに役立つ取り組みです。一方で、IoT機器、クラウド、遠隔保守、ITとOTの接続が増えると、管理すべき機器や通信経路、アクセス権限も広がる場合があります。

重要なのは、デジタル化を止めることではありません。導入の目的を明確にし、接続先、管理責任者、認証、更新、障害時の対応を事前に確認することです。

まずは今日、最近導入した機器やサービスを一つ選び、管理責任者と接続先を確認してみてください。デジタル化の効果を安全に活用するための、現実的な第一歩になります。

参考にした公的情報

※この記事は工場のデジタル化に伴う一般的なセキュリティ課題を解説しています。実際のリスクと必要な対策は、設備構成、導入サービス、運用状況によって異なります。設備の設定変更や停止は、安全を確認したうえで専門家と相談してください。

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