サイバー攻撃によって工場のシステムが停止した場合、企業に発生する負担は、システムを元に戻す費用だけではありません。
原因調査や専門家への相談、データの復旧などに費用がかかる可能性があります。さらに、製造や出荷が止まれば売上が減少する一方、人件費や設備費などの固定費は続くことがあります。
復旧に時間がかかるほど、資金繰りや取引先への対応にも影響が及ぶ可能性があります。
今回は、製造業がサイバー事故に備えるうえで知っておきたい復旧費用と利益減少のリスク、事前対策、サイバー保険で確認したいポイントを解説します。
1.サイバー事故では何に費用がかかるのか
システム障害や情報漏えいが発生した際には、被害状況や原因を確認し、業務を再開するための対応が必要になることがあります。
- 原因調査やログ解析などの調査費用
- 外部の専門家やセキュリティ事業者への相談費用
- システムやサーバー、端末の復旧費用
- データの復元や再入力にかかる費用
- 取引先への説明や問い合わせ対応にかかる費用
- 必要に応じた弁護士などへの相談費用
発生する費用は、事故の種類、被害範囲、利用しているシステム、復旧方法などによって異なります。自社だけで対応できるとは限らず、専門家の支援が必要になる場合もあります。
2.売上が減っても固定費は続く
工場の操業が停止した場合、製品を生産できない、出荷できない、受注への対応が遅れるといった影響が生じる可能性があります。
一方で、操業を停止している間も、従業員の人件費、設備の維持費、賃料などの支出が続く場合があります。
つまり、企業には復旧のための支出と、事業活動が滞ることによる利益の減少が同時に発生する可能性があります。
例えば、こんな影響が考えられます
- 受注や生産管理のシステムが使えず、注文内容を確認できない
- 製造データを利用できず、製品の生産や検査が遅れる
- 出荷管理が止まり、納期の変更や取引先への説明が必要になる
- 復旧を優先するため、通常業務や新たな受注への対応が難しくなる
実際の損失は、停止した業務や期間、代替手段の有無、取引条件などによって変わります。自社の業務がどこで止まると、売上や利益に影響するのかを事前に把握しておくことが重要です。
3.復旧費用と利益減少に備える5つの対策
① 重要なシステムと業務を洗い出す
受注、生産管理、設計データ、検査、出荷など、事業を続けるために欠かせないシステムを整理します。停止した場合の影響を確認し、優先して復旧する対象を決めましょう。
② バックアップを分離して保管する
重要なデータは、通常のネットワークや端末と分離した環境にもバックアップを保管します。バックアップを取得しているだけで安心せず、実際に復元できるかを定期的にテストすることが大切です。
③ 代替手段を準備する
システムが使えない場合に、受注や出荷の情報をどのように確認するか、手作業でどこまで業務を継続できるかを決めておきます。紙の帳票や別の連絡手段など、現場で実行できる方法を検討しましょう。
④ 復旧の責任者と連絡先を決める
システム管理者、経営者、現場責任者、外部の専門家、取引先への連絡担当を整理します。事故発生時に誰が判断し、誰に連絡するのかを明確にしておくことで、対応の遅れを抑えやすくなります。
⑤ 復旧に必要な資金を考えておく
専門家への依頼やシステム復旧などに費用がかかる場合を想定し、必要な資金をどう確保するかを考えます。手元資金で対応できる範囲と、保険などで備えたいリスクを整理しておきましょう。
4.サイバー保険で確認したい補償内容
サイバー保険には、契約内容に応じて事故調査費用、復旧費用、第三者への損害賠償責任、利益損害などを補償対象とする商品があります。ただし、すべての費用や利益の減少が自動的に補償されるわけではありません。
加入中の契約や検討中の商品について、次のポイントを確認しましょう。
- 事故原因の調査や専門家への相談費用が対象となるか
- システムやデータの復旧費用がどこまで対象となるか
- 操業停止などによる利益損害が補償対象となるか
- 利益損害の対象となる事故や支払条件、算定方法
- 補償の対象期間、支払限度額、免責金額
- 対象外となる事故や費用、適用される特約
- 事故発生時の連絡期限や、対応を始める前の承認要件
利益損害の補償は、契約によって対象となる事故や損害の範囲、算定方法などが異なります。また、単に売上が減少したというだけで補償されるとは限りません。
事故が起きた場合は、保険会社の事故受付窓口へ早めに連絡し、必要な手続きや費用の扱いを確認しましょう。契約内容を確認せずに、すべての復旧費用や利益減少が補償されると考えないことが大切です。
5.事故発生時に慌てないための初動
- 異常を確認した日時や状況、影響が疑われるシステムを記録する
- 被害の拡大防止を図り、必要な記録やログを保全する
- 社内の責任者やシステム管理者、必要に応じて専門家へ連絡する
- 復旧の優先順位と、代替手段による業務継続を検討する
- 保険会社の事故受付窓口に連絡し、必要な手続きや承認条件を確認する
初動では、被害の拡大防止と証拠の保全を意識しながら、専門家の助言を受けて対応することが重要です。保険で費用の支払いを受ける可能性がある場合は、対応の進め方や記録の残し方も確認しましょう。
6.復旧費用と利益減少への備えチェックリスト
- □ 重要なシステムと、停止時に影響する業務を把握している
- □ バックアップを分離して保管し、復元テストを行っている
- □ システム停止時の代替手段を決めている
- □ 復旧の優先順位と責任者を決めている
- □ 取引先への連絡手順を整理している
- □ 復旧費用をどのように確保するか検討している
- □ サイバー保険の復旧費用と利益損害の補償条件を確認している
まとめ:復旧費用と利益減少は分けて考える
サイバー事故では、原因調査やシステム復旧などの費用に加え、操業停止による売上や利益の減少が発生する可能性があります。
重要なシステムの把握、バックアップの復元テスト、代替手段、初動体制を整えるとともに、復旧費用と利益損害への備えを分けて考えることが大切です。
サイバー保険についても、補償対象、支払条件、免責金額、対象期間などを確認し、自社の事業に合った備えになっているかを見直しましょう。
参考情報
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。実際の費用負担や保険の補償可否は、事故状況、契約内容、約款や特約などによって異なります。

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